相続税の申告書を提出した後の話。相続財産のうち証券会社に残されている被相続人または家族名義の口座(顧客勘定元帳)について、調査官が確認の必要性を感じた場合は口座の復元など文書照会によって取り寄せることがある
どういった場合に必要性を感じるかといえば、生前の所得あるいは毎年提出されている財産明細書からみて、証券部門に関わる財産が不自然に過小ではないかと疑われる場合である。
申告された申告書のうち、ほぼ全てを確認の意味で照会することはよく知られていることだが、原則として残高の確認が一般的であり、申告されている以外の証券会社を照会しまくるようなことはしない。
被相続人または家族名義の口座を確認することは次の段階であるが、そのことによって、証券売買の実態を復元し、もし残高が不足しているようなら、どこに出金されているかをさらに確認しなければならない。
客勘(顧客勘定元帳)の入出金を本格的に証券会社に反面調査するときは、調査着手した後である。この「独り言シリーズ」は調査着手までの話なのでここで止めるが、調査されやすいケースの一つとして、証券会社の口座が疑われた時、ということになる。
2008年3月28日金曜日
Vol.10 株式売買は見られている
2008年3月21日金曜日
Vol.9 文書照会はかたっぱしから・・・
相続税の申告書が税務署に提出されると、調査対象として選定される前処理として、かたっぱしから文書による金融機関等への照会が行われる。文書照会とは相手方金融機関に対して実際に臨場して確認するのではなく、文書によって申告されたものおよびそれ以外のものがないかどうかについて確認してもらう調査技術である。
実際の調査対象以外に対して行う確認は反面調査と呼ばれているが、これもその一種で時間節約のためによく使われる手法である。例えば申告書に被相続人名義の生命保険、外貨建変額個人年金、医療保健等の存在が書かれていた場合、まずは被相続人名義の保険商品がそのほかにもないか照会されることになる。
次に、被相続人がオーナーを勤めている法人名義の保険商品がないかどうか、あるいは妻・子供・親名義の保険商品の有無を確認してもらうことになる。関連保険商品を確認するのは、被相続人がそれらの真実の名義人かどうかのチェックをするためである。とくに外資系などは分かりにくい商品が存在するため、場合によっては実際に臨場して確認することになる。この場合、不審点があれば間違いなく調査対象に選定されることになる。
2008年3月10日月曜日
Vol.8 亡くなったあとのシッペ返し
今はあまりいないと思うが辞めさせた家政婦などから「ちくり」すなわち内部告発文が寄せられたり、隣近所で生前の豪勢な生活をやっかむ人物から詳細な電話が国税当局にかかってくる場合がある。さらには二代目・三代目のボンボンではない生粋の初代の取引先で苛烈な取引条件により倒産させられた人間などから情報が寄せられる場合もある。恨み・つらみ・嫉みなどから端を発したそれらの情報は、しっかり生前からのファイルに綴じこめられ、当人が亡くなったときその封が開けられることになる。
生前は確定申告やオーナー会社の申告書などで常に情報を入手している国税当局は、極めつけ最後の相続税申告およびその調査で人生の経済・課税総決算を迫ってくる。当然、生前の各種申告書やそれにまつわる調査では、業種によってはまったく把握されていなかった財産や権利を亡くなった後に総ざらいされるということである。
人の口に戸は立てられないのことわざどおり、良くしても悪く接してはもちろんしっぺ返しを受けてしまうこの日本社会。寄せられる告発記録に目を通せば赤裸々な生前の行状が洗い出され、今までの恨みの数々を初めとした精神の「鬱屈」のすさまじさに、ただただ呆れるばかりなのである。
2008年2月12日火曜日
Vol.7 家族以外に流れたお金
生前の風評や身内からの内部告発が相続税調査の引き金になることもある。愛人や二号サン、あるいは非嫡出子(婚外子)など(以上を特殊関係人と呼ぶ)の存在が確認できる場合は、正式な相続財産以外にそういった人に配慮した隠し財産の存在を疑ってみることにつながる。
例えば生前の預金の動きから家族以外の人間の口座に金の流れが確認された場合、何らかの関係者として突っ込んだ資料収集、探りが入れられることになる。また生前のまとまった資産移動でわからなくなった行き先があり、結局相続財産に載ってこない場合も原因の一つにそういった存在を推定することになる。相続税調査では、生前の資産は現金を初めとしてすべてトレース作業が行われ、消費分を含め、行き先の妥当性が検討され尽くすからである。
以上のケースは被相続人が人間味豊かだった場合だが、逆に、一銭も渡していない特殊関係人がおり、マジ切れの内部告発文が寄せられる場合もある。自らの正当化のため「恨み」・「つらみ」が連綿と記述された後に「隠し財産・株式・預金」などの存在が具体的に示されている場合は、それこそ当局にとっての「お宝」ということになっていくのだ。
2008年2月6日水曜日
Vol.6 情報化時代。「遺産」もさまざま
生前「町の発明家」でチョッとした発明から1億、2億の特許権料や実用新案権料を稼いだ人がいるとしよう。自分で事業化し株式会社組織等を立ち上げて、権利に基いて明確なお金の出し入れがわかる場合は問題ない。問題があるとすれば、そのような権利を企業に売却しロイヤリティ(販売金額に応じた手数料)を受取っていたような場合である。引き続いて同じ銀行口座に入金されていれば良いが、被相続人の口座が分散されていたり、支払う側が支払いを滞らせていた場合など相続人も把握できないことがある。
同じようなケースとして「MLM=マルチレベルマーケティングの略で化粧品の販売や携帯電話の販売時に良く使われる手法。取扱商品が無い場合は悪徳マルチなどといわれることがある」組織のいいポジションにいた人で、受け取り口座が不明だったりMLM組織が被相続人に手数料を支払っていなかった場合なども複雑になってくる。
その他最近ではインターネットを使用した「情報商材」や「アフィリエイト」として企業の商品・サービスを広告する仕事があり、さらに「携帯電話用の小説」などもあったりする。こうした取引は個人的な場合が多いので、遺族にとってもすべてを把握することは不可能に近い。
以上は毎月の手数料のみならず、「権利自体の評価」次第で巨額の相続税が発生するケースもあるので見過ごせない問題である。
2008年1月28日月曜日
Vol.5 海外渡航も足が付く
昨今海外資産に対する相続税・贈与税の取り扱いが厳しくなったが、少し前まで国によって軽減されていたり、まったく存在していないケースを利用する形で、様々な対策が存在していた。最近の判例でもある上場大手サラ金会社の後継者が、いったん国税から下された決定を裁決の場でひっくり返したケースは、聞き覚えのある方も多いことだろう。
海外渡航暦の多い又は海外送金の多い「タレント」・「アーティスト」・「作曲・作詞家」・「作家」・「政治家」・「評論家」・「会社社長・役員」・「医者」・「アスリート(スポーツ選手)」・「格闘家」・「各種プロデューサー」・「映画監督」・「弁護士・会計士・税理士」・「代議士及びその秘書」などは海外隠し資産を疑われると思って間違いない。
風評や個人あるいは法人での確定申告内容、さらには金融機関・税関などから収集する資料で、ある程度の「めぼし」を付けてあるものなのである。現金・貴金属など直に持ち出ししていれば足がつかないのではと思われるかもしれないが、航空会社の搭乗記録さらには国税の現地駐在員(アタッシュ)も居る。また租税条約締結国では予想外に迅速な反面確認が可能となってきたから安易に考えるのは禁物だ。
2008年1月15日火曜日
Vol.4 残高ゼロでもチェックされる
本当の資産家の心理は自分がそうではないので計りかねるが、案外質素でメリハリがあるものなのかもしれない。日本に多い土地がほとんど、つまり先祖からの財産を引き継いでいる場合は別として、ちょっと前に流行った「IT長者」や「個人開業医」、「上場会社オーナー一族」などは株や債券、外為などを別口で行う場合が多い。つまり名義を借りた事実上の借名取引で、当の本人は「死期」が近づいたと悟った時や気力がなくなったと感じた時、さっさと手仕舞って(終わりにして)、口座残高を0円にしてしまうことも多い。
証券会社に対して反面調査を行うと、「顧客勘定元帳」を必ず調査するものだが、現状たいした現金残や預かり資産が無くとも、過去に多額の取引や利益を上げている場合は「チェック」されるケースが多いと考えたほうが良いだろう。
国税局や税務署でも「特別チーム」があり、別件で分からぬようにそういった目立つ口座をピックアップしておくものだが、まさに頭隠して尻隠さずで、残高さえゼロにしておけば安心と思っている人が意外に多い。証券会社から自分の銀行口座に資金を移動すれば必ず足が付くし、たとえ現金で持ち運びしたところで証券会社担当者の口はふさげないからである。