2008年12月19日金曜日

Vol.19 海外資産はこうして把握する

このところ、100年に1度といわれている金融危機に見舞われている。こうしたなか、財産を土地で残すにしろ、有価証券で残すにしろ、不安は尽きないものだ。それならば、いっそのこと「金地金」で残すのも一つの方法では・・・と、そんな考えを持つ人もいるのではないか。

さて、こうした納税者に関する資産情報については、税務当局では国税総合管理(KSK)システムにビックリするほど蓄積している。では、税務当局は、こうした資産運用・資産購入・資産海外送金などの資料をどうやってから収集し、どういった形で相続税の調査選定になで結びつけるのか紹介する。

なかでも今回は、オフショア金融センター、つまり「バハマ・ケイマン・マン島」などいわゆるタックス・ヘブン(税金天国)にエスケープされた相続財産はどうなるのか、について考えてみる。

まさかそういった「税金天国」から、わが国税務当局に資料せんが送られることは100%ないので、当局が知り得るとすれば、海外送金資料ということになる。

それとキャプティブなどで送金された相手法人の確認。この場合、相手は「保険会社」になるが、保険会社が作り易く、現地の人間が保険会社をいくつも一人で切り回していることは、当局にも周知の事実である。

そういった会社の実態を調査するのである。当然相続財産の一部であると考えているのだ。

また、出張などで頻繁に海外に出かけることが多かった人には、貴金属や宝石の持ち出し疑惑がかかり、この場合も調査選定にされ易いといえるだろう。ただし、タックス・ヘブンを始め、海外への資産持ち出し(エスケープ)にはリスクが伴うと同時に、本人の死後、そういった資産が行方不明になったり、完全に忘却されたりする可能性もあるので、当局からの資料提供は、相続人に感謝されるケースもある。

2008年11月21日金曜日

Vol.18 子孫に美田を残すと…

今回からは数回に分けて、「資産税」部門に集積されている被相続人の生前資料からどのように相続調査の選定が行われるか説明する。

生前、被相続人が、法人のオーナーまたは個人の事業者だった時代に高級品を購入していれば、そのデータが税務当局にはある。そのため、別荘や絵画、ヨットやクルーザー、高級外車、リゾートクラブやゴルフ会員権といった購入事績があり、法人税や個人所得税の調査が不十分のまま死去してしまったら、やはりこの「高級品」に眼がいくことになる。

もとより、相続税調査は、自然人つまり人間(日本国民)が最後に受認しなければならない義務といえる。しかし、本人は亡くなっているため、相続人がかわりに調査を受けることになる。税務当局側の考え方としては、生前の法人なり個人事業からの税金を100%捕捉していなくとも、相続時つじつまが合えばOKという考え方もできる。ただし、マンパワーに限りもあるので、十分吟味し、全体の30%程度にしか調査が行われない。

そのなかで、事例にあげたような、不審な高級品(物件)購入資料が見つかれば、当局としては、相続税の申告財産リストにあるかないかは別として、いったんは調査選定したくなるのが人情というものだ。

当然、相続税申告書に、その高級品が記載されていなければ、換金資産の行方を追う。しかしかなが、税務当局が、高級品(物件)の購入自体に“ブルブル”と震えるのは、やはり嫉妬心を感じる?からというのもいいすぎではないように感じる。

“子孫に美田を残さず”といった偉人もいるが、やはり派手に資料に残るような買い物は、美田というよりは子孫に手痛い“ツケ”を残すことにもなりかねないので、しっかり説明できるに、生前から相続人を教育することが必要であろう。

2008年10月17日金曜日

Vol.17 事業承継税制に不安材料

平成21年度税制改正では、中小企業の事業承継にとって革命的な法案が予定されており、成立すれば今年10月から遡及適用される。その革命的な法案とは、事業の後継者を対象とした「取引相場のない株式等」に係る相続税の納税猶予制度の創設だ。

すでに、その基盤となる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)は可決され、今年10月から施行される。税制はその後付となる形だ。

この事業承継税制、簡単にいってしまえば、一定条件を満たした場合、後継者が相続または遺贈により取得した自社株式の80%に対応する相続税の納税を猶予するといいうもの。

一定条件とは、「中小企業基本法の中小企業」であること。たとえば、製造業であれば、資本金3億円以下または従業員数が300人以下。また被相続人は「会社の代表者」、「被相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主であったこと」、さらに相続人(後継者)は、「当該会社の代表者である」「相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超の株式を保有かつ同族内で筆頭株主となること」となっている。

相続税法が、ほかの点で変わらない(遺産取得課税方式への見直しは除く)とすれば朗報である。

私見だが、極端にいえばすべての財産を株式化した場合最も有利(取得した自社株式の80%とはいえ限度は発行済議決株式総数の3分の2となっている)とも思えるが、兄弟姉妹間の争いや、税法の“シバリ”もなにか出てきそうで、そんなに単純にことが運ばない気がする。

2008年9月19日金曜日

Vol.16 相続税調査でまず探すのは「名義預金」

このコラムではこれまで、調査されやすい業種から始まり、告発文書あるいは関係者からのタレコミ電話を通じた一連の調査着手までの流れ、さらには、実際に相続税申告書が提出されたあと、当局部内でどのように処理されるか紹介してきた。

そこで今回は、相続税調査担当部署の基本姿勢、つまり調査に臨むにあたっての技術的な部分について教えたいと思う。

現在の国税職員の人数的な問題から、相続税調査のキャパシティとして、相続税申告書が提出された中で30%程度が調査可能な件数ということはかなり知られている。この30%をどう選んでいくかも、これまでのなかで解説してきた。では、もし調査されるとすれば、その相続人は、当局から具体的にどう調査されるのだろうか。

ひとつ言えることは、かなりの確証を持って調査に来るということだ。もちろん予告の上、紳士的に調査を進めることはあたりまえだが、ひとたび調査になったら、なんらかの問題点を指摘してくる可能性は高い。

準備調査の段階で、とくに力を入れて調べるのが、かつては、被相続人のものだったが、すでに相続人名義となっている「預金」。つまり「名義預金」の存在だ。可能な限り事前照会し、不審な預金関係はすべて洗い出す。そして、いったん臨場した場合、それら不審点を中心にして、調査内容を構成する。もちろん、周辺からの巧みな“いもづる”話法を駆使してくることは間違いない。

2008年8月15日金曜日

Vol.15 不正履歴は一生付きまとう

ここで書いていることは、主として記憶に頼っている面が強いので、相続税に関して100%正確を期す場合は、顧問税理士にでも確認していただくとありがたい。 ただし、相続税に関するエッセンスはお伝えできているものと思っている。 今回も、相続税の申告書を出した後からの話をさせてもらう。法人税ないし個人所得税の調査記録は、永久に残る場合がある(法人であれば存続期間、個人であれば生存中)。これは、元税務調査官だった国税OB税理士をはじめ、税務行政の現場にいた幾多の先輩たちがお伝えしてきていることであると思う。

つまり、法人のオーナー経営者あるいは個人事業者が悪質な不正に絡んでいる場合は、その情報が相続税調査にまで影響してくるということなのだ。 この「元税務調査官のひとりごと」のコラム掲載のスタートごろだったが、生前営んでいた法人か個人の業種によって見方が違うといった話をした。それにも関係するが、今回は、業種に関係なく、当局内部の調査記録の話をしよう。

ひとことで言えば、「不正計算」があれば一生付いてまわり、相続の時点でも、法人税や個人所得税で取りもれたであろう不正所得の一部をしつこくかぎまわられる。当局は義務とでも感じているのかもしれないが、相続税の関門は最後の砦である。“三途の川の渡し舟”を出すために、生前の行為によっては“追い銭”が必要なのかもしれない。

2008年7月18日金曜日

Vol.14 調査先の選定基準は…

相続税の申告書を提出した後の話。生前の収入や所得の状況は、被相続人の確定申告書もしくは調査官調査資料あるいは機動官開発資料、古い査察資料(役員報酬・不動産・乗用車・株式・投資信託・預貯金・保険・タックスヘイブン・愛人・宝石・時計など)によってあらかじめ把握されている。

とくに、確定申告書で財産・債務の明細が申告されているような場合は、その暦年の記録から被相続人の財産状況はおおむね推量されているものだ。したがって、被相続人自身が提出していた確定申告書などから導き出される財産状況と相続税の申告書での中身が著しく違っていた場合、当然調査対象に選定されるということになる。

中身が著しく違うとはどういう状況なのだろうか?「どこまで違えば問題か」ということは興味深い話だと思う。

税務行政とは生き物である。その時々の経済社会情勢によって変わってくる。つまり、税務署の統括官が選定する際の基準値は相当程度としかいえないのが良心的な見解だ。煙に巻くようで申し訳ないが、「受け継いだ財産」+「稼いだ所得」+「もらった財産・使った金・損した金」=「相続財産」なのであり、税務署想定値と申告上の財産が統括官の個人的許容限度以上に違えばやはり問題になる。

2008年6月13日金曜日

Vol.13 形のあるもの、形のないもの

権利とは経済的利益を一定の期間受けることを許された無体財産である。逆読みすると「利権」となり、こちらのほうは同じ経済的利益でも期間や保証のない、ある種の財産ということになろう。相続税が対象としている無体財産は両方を指すが、前者の方が著作権、特許権、実用新案権など公的に保障された権利であるのに対して、後者で対象となるものはMLM(マルチ・レベル・マーケティング)組織上あるいは保険代理店組織上など、認められた相続可能な利権のみである。

政治家の利権、個人商社の商権などは明文の規定がない場合、経済的価値とは認められない。法人組織上合併や買収などで獲得した暖簾も株式という財産を通じて財産の一部と認められることはあっても、そういった厳密な規定がなされていないような場合は財産と認識されないのである。

逆に言えば目に見える確かな形なき財産の移転は現行相続税法の範囲とするところではないので、親から子に伝える伝統芸、あるいは法人でいえば帝王学など教育投資ないしはノウハウ、人的組織など、知恵に長けた税理士などは巧妙に相続税の網をくぐり抜けさせているものなのである。

要するに現行相続税法でとらえきれる無体財産は、生前の職業などから特許庁などに照会し、問題点が発見できれば、すかさず調査に移行するということである。

2008年5月19日月曜日

Vol.12 税務署の事務ルールを考察

相続税の申告書が提出され、受付印が押された後、管理部門を経由し、再度個人課税(相続税・贈与税)部門に戻ってきてからの話。実を言うとその事務年度(国税においては7月に始まり6月に終了)のある一定の月までに申告された申告書を、ある一定の月までに処理(調査あるいは調査省略どちらか)する。つまりそれは基本事務処理手順であり、それに漏れた申告書に対してはもう調査は行われない。つまり、原則として1年間(1回)が相続税での調査対象期間であり、例えば法人税のごとく3~4年に1度といったサイクルはないのが現実だ。

さて、申告書の中身だが、今回は銀行・信託銀行・郵政公社改めゆうちょ銀行などの商品について見てみよう。申告された内容のルーチンな確認ということで、すべての銀行などに紹介文書を送付する。申告された預金や信託財産どおりであればそれでよし、そうでなければ即必要に応じて調査対象に選定されるということ。

大切なことは、申告されている金融機関以外は照会文書を送らない(送れない)ということだ。ただし、だからといって外資系銀行預金について漏らして申告したところで、後日コラムでも紹介しますが、金融機関が必ず提出しなければいけない情報資料せんが税務署に集積されているので、言い逃れは困難であるということがいえる。

2008年4月11日金曜日

Vol.11 税務署が活発に動く時期

相続税の申告書を提出後、相続財産のうち「預金」・「信託財産」・「貸し金庫」などについて税務署での文書照会によって問題ありとされるケースがある。その場合は、そのまま調査対象候補として選定されてしまうか、より慎重にとくに大口不正が見込まれる場合はさらに預金口座の復元等の文書照会が行われることになる。

税務署資産税部門には夏の人事異動時期および夏休み明けから年末にかけて活発に動く時期がある。その後は確定申告を迎えたりなんなりで、年末までより活動量が減ってしまうのが実情である。活発に動く時期には国税局連携として特殊部門による調査も用意しなければならない。

申告された以外の預金や信託財産あるいは貸し金庫の存在がほぼ確定されたときは、間違いなく調査対象として選定されることになる。そして名義預金も含め銀行・信託銀行・郵政公社などの口座・入出金振替伝票・融資稟議書などは徹底的に調査されることになる。

もちろん貸し金庫も相続人立会いのもと、開かれて中身を確認されることとなる。ただし、これは調査着手後の話。実際の調査着手後はさらに各種資料および相続人との面接などによりその他未知の金融機関調査も視界に入ってくるのだ。

2008年3月28日金曜日

Vol.10 株式売買は見られている

相続税の申告書を提出した後の話。相続財産のうち証券会社に残されている被相続人または家族名義の口座(顧客勘定元帳)について、調査官が確認の必要性を感じた場合は口座の復元など文書照会によって取り寄せることがある

どういった場合に必要性を感じるかといえば、生前の所得あるいは毎年提出されている財産明細書からみて、証券部門に関わる財産が不自然に過小ではないかと疑われる場合である。

申告された申告書のうち、ほぼ全てを確認の意味で照会することはよく知られていることだが、原則として残高の確認が一般的であり、申告されている以外の証券会社を照会しまくるようなことはしない。

被相続人または家族名義の口座を確認することは次の段階であるが、そのことによって、証券売買の実態を復元し、もし残高が不足しているようなら、どこに出金されているかをさらに確認しなければならない。

客勘(顧客勘定元帳)の入出金を本格的に証券会社に反面調査するときは、調査着手した後である。この「独り言シリーズ」は調査着手までの話なのでここで止めるが、調査されやすいケースの一つとして、証券会社の口座が疑われた時、ということになる。

2008年3月21日金曜日

Vol.9 文書照会はかたっぱしから・・・

相続税の申告書が税務署に提出されると、調査対象として選定される前処理として、かたっぱしから文書による金融機関等への照会が行われる。文書照会とは相手方金融機関に対して実際に臨場して確認するのではなく、文書によって申告されたものおよびそれ以外のものがないかどうかについて確認してもらう調査技術である。

実際の調査対象以外に対して行う確認は反面調査と呼ばれているが、これもその一種で時間節約のためによく使われる手法である。例えば申告書に被相続人名義の生命保険、外貨建変額個人年金、医療保健等の存在が書かれていた場合、まずは被相続人名義の保険商品がそのほかにもないか照会されることになる。

次に、被相続人がオーナーを勤めている法人名義の保険商品がないかどうか、あるいは妻・子供・親名義の保険商品の有無を確認してもらうことになる。関連保険商品を確認するのは、被相続人がそれらの真実の名義人かどうかのチェックをするためである。とくに外資系などは分かりにくい商品が存在するため、場合によっては実際に臨場して確認することになる。この場合、不審点があれば間違いなく調査対象に選定されることになる。

2008年3月10日月曜日

Vol.8 亡くなったあとのシッペ返し

今はあまりいないと思うが辞めさせた家政婦などから「ちくり」すなわち内部告発文が寄せられたり、隣近所で生前の豪勢な生活をやっかむ人物から詳細な電話が国税当局にかかってくる場合がある。さらには二代目・三代目のボンボンではない生粋の初代の取引先で苛烈な取引条件により倒産させられた人間などから情報が寄せられる場合もある。恨み・つらみ・嫉みなどから端を発したそれらの情報は、しっかり生前からのファイルに綴じこめられ、当人が亡くなったときその封が開けられることになる。

生前は確定申告やオーナー会社の申告書などで常に情報を入手している国税当局は、極めつけ最後の相続税申告およびその調査で人生の経済・課税総決算を迫ってくる。当然、生前の各種申告書やそれにまつわる調査では、業種によってはまったく把握されていなかった財産や権利を亡くなった後に総ざらいされるということである。

人の口に戸は立てられないのことわざどおり、良くしても悪く接してはもちろんしっぺ返しを受けてしまうこの日本社会。寄せられる告発記録に目を通せば赤裸々な生前の行状が洗い出され、今までの恨みの数々を初めとした精神の「鬱屈」のすさまじさに、ただただ呆れるばかりなのである。

2008年2月12日火曜日

Vol.7 家族以外に流れたお金

生前の風評や身内からの内部告発が相続税調査の引き金になることもある。愛人や二号サン、あるいは非嫡出子(婚外子)など(以上を特殊関係人と呼ぶ)の存在が確認できる場合は、正式な相続財産以外にそういった人に配慮した隠し財産の存在を疑ってみることにつながる。

例えば生前の預金の動きから家族以外の人間の口座に金の流れが確認された場合、何らかの関係者として突っ込んだ資料収集、探りが入れられることになる。また生前のまとまった資産移動でわからなくなった行き先があり、結局相続財産に載ってこない場合も原因の一つにそういった存在を推定することになる。相続税調査では、生前の資産は現金を初めとしてすべてトレース作業が行われ、消費分を含め、行き先の妥当性が検討され尽くすからである。

以上のケースは被相続人が人間味豊かだった場合だが、逆に、一銭も渡していない特殊関係人がおり、マジ切れの内部告発文が寄せられる場合もある。自らの正当化のため「恨み」・「つらみ」が連綿と記述された後に「隠し財産・株式・預金」などの存在が具体的に示されている場合は、それこそ当局にとっての「お宝」ということになっていくのだ。

2008年2月6日水曜日

Vol.6 情報化時代。「遺産」もさまざま

生前「町の発明家」でチョッとした発明から1億、2億の特許権料や実用新案権料を稼いだ人がいるとしよう。自分で事業化し株式会社組織等を立ち上げて、権利に基いて明確なお金の出し入れがわかる場合は問題ない。問題があるとすれば、そのような権利を企業に売却しロイヤリティ(販売金額に応じた手数料)を受取っていたような場合である。引き続いて同じ銀行口座に入金されていれば良いが、被相続人の口座が分散されていたり、支払う側が支払いを滞らせていた場合など相続人も把握できないことがある。

同じようなケースとして「MLM=マルチレベルマーケティングの略で化粧品の販売や携帯電話の販売時に良く使われる手法。取扱商品が無い場合は悪徳マルチなどといわれることがある」組織のいいポジションにいた人で、受け取り口座が不明だったりMLM組織が被相続人に手数料を支払っていなかった場合なども複雑になってくる。

その他最近ではインターネットを使用した「情報商材」や「アフィリエイト」として企業の商品・サービスを広告する仕事があり、さらに「携帯電話用の小説」などもあったりする。こうした取引は個人的な場合が多いので、遺族にとってもすべてを把握することは不可能に近い。

以上は毎月の手数料のみならず、「権利自体の評価」次第で巨額の相続税が発生するケースもあるので見過ごせない問題である。

2008年1月28日月曜日

Vol.5 海外渡航も足が付く

昨今海外資産に対する相続税・贈与税の取り扱いが厳しくなったが、少し前まで国によって軽減されていたり、まったく存在していないケースを利用する形で、様々な対策が存在していた。最近の判例でもある上場大手サラ金会社の後継者が、いったん国税から下された決定を裁決の場でひっくり返したケースは、聞き覚えのある方も多いことだろう。

海外渡航暦の多い又は海外送金の多い「タレント」・「アーティスト」・「作曲・作詞家」・「作家」・「政治家」・「評論家」・「会社社長・役員」・「医者」・「アスリート(スポーツ選手)」・「格闘家」・「各種プロデューサー」・「映画監督」・「弁護士・会計士・税理士」・「代議士及びその秘書」などは海外隠し資産を疑われると思って間違いない。

風評や個人あるいは法人での確定申告内容、さらには金融機関・税関などから収集する資料で、ある程度の「めぼし」を付けてあるものなのである。現金・貴金属など直に持ち出ししていれば足がつかないのではと思われるかもしれないが、航空会社の搭乗記録さらには国税の現地駐在員(アタッシュ)も居る。また租税条約締結国では予想外に迅速な反面確認が可能となってきたから安易に考えるのは禁物だ。

2008年1月15日火曜日

Vol.4 残高ゼロでもチェックされる

本当の資産家の心理は自分がそうではないので計りかねるが、案外質素でメリハリがあるものなのかもしれない。日本に多い土地がほとんど、つまり先祖からの財産を引き継いでいる場合は別として、ちょっと前に流行った「IT長者」や「個人開業医」、「上場会社オーナー一族」などは株や債券、外為などを別口で行う場合が多い。つまり名義を借りた事実上の借名取引で、当の本人は「死期」が近づいたと悟った時や気力がなくなったと感じた時、さっさと手仕舞って(終わりにして)、口座残高を0円にしてしまうことも多い。

証券会社に対して反面調査を行うと、「顧客勘定元帳」を必ず調査するものだが、現状たいした現金残や預かり資産が無くとも、過去に多額の取引や利益を上げている場合は「チェック」されるケースが多いと考えたほうが良いだろう。

国税局や税務署でも「特別チーム」があり、別件で分からぬようにそういった目立つ口座をピックアップしておくものだが、まさに頭隠して尻隠さずで、残高さえゼロにしておけば安心と思っている人が意外に多い。証券会社から自分の銀行口座に資金を移動すれば必ず足が付くし、たとえ現金で持ち運びしたところで証券会社担当者の口はふさげないからである。